“んめ”のをつくりたくて、畑から出たもの以外は畑に入れない、足さない。【大友惣兵衛】の自然栽培えだまめ

“んめ”のをつくりたくて、畑から出たもの以外は畑に入れない、足さない。【大友惣兵衛】の自然栽培えだまめ

諸国良品

2025/07/01

枝豆といえば、山形県庄内地方の「だだちゃ豆」を思い浮かべる人も多いかもしれません。ただ、その名称を名乗っていいのは鶴岡市周辺のごく限られた地域で生産されたもののみ。一大産地ながら、だだちゃ豆には認定されないエリアで、自然栽培で枝豆を育てているのが、江戸時代から16代続く農家「大友惣兵衛」の大友真樹さんです。大友さんが手掛けるのは「茶豆」はもとより、近年、山形で注目を集めている品種「秘伝」です。香りがよく、甘みもあり、大粒で食べ応えがあるため、「このような品種は後世までひそかに伝えていくべき」と名づけられた品種です。

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北に鳥海山、南東に出羽三山を望む、庄内平野の真ん中辺りに位置する山形県庄内町。海から吹く「西風」と、陸地から海に向かって吹く「だし風」の影響を受ける“風の町”として知られています。この地で育つ枝豆は、小さなうちから風を浴びて育つため、背丈は伸びにくいものの、倒れにくく丈夫に生育するそうです。そんな土地で、大友真樹さんは栽培期間中、農薬・肥料を使用せず、自然栽培による枝豆栽培に励んでいます。

きっかけは、同じ山形県内で自然農法で作物を栽培する農家「中川吉右衛門」さんとの出会いでした。「彼が作った人参が、エグみがなくて“んめ”かったんです。葉っぱまで香りが良かった」。こうして大友さんは自然栽培に乗り出そうとしますが、父親は「そんな怖ぇもんだめだ」と反対。それでも農薬や肥料がなくても畑が成り立つことを知った大友さんは、一度やってみるしかないと諦めませんでした。「結果、収量は十分、何よりも味が“んめ”かった」。そして、当時3歳だった姪っ子が、父親の慣行栽培のものよりも、大友さんの自然栽培の枝豆の方がおいしい!と言ったことが決め手となり、父親も納得したんだそうです。

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以来、自然栽培で枝豆を作り続けて10年余り。良い年もあれば、悪い年もありましたが、最初の頃よりは明らかに強い枝豆が育つようになったといいます。「マメ科の根っこには根粒菌という菌が共生することで、豆を実らせるんですが、初めの頃は土の酸性度が強すぎてその菌が生きられなかったんです」。土壌を改良するために、大友さんはあえて雑草を生やしては枯らし、土に戻していきました。結果、徐々に土壌の酸性度が中和され、良い時は慣行栽培と変わらないほどの収量が採れたこともあったそうです。こうして「畑から出たもの以外は畑に入れない、足さない」という信念の自然栽培にたどり着いたのです。

それでも押し並べての収量は慣行栽培の半分という自然栽培の枝豆。にもかかわらず、大友さんが自然栽培にこだわるのはとにかく「んめぇから」。味がくどくない、豆本来の味がする、と評判が評判を呼ぶように。大友さんが先駆者となり、地元の農家仲間も徐々に自然栽培の仲間に加わっていき、今では旧十六合(いざあい)村の農家で構成する「イザイネクスト」というチームも組織するほどになりました。「土の酸性度が落ち着いてくる3年目には、畑が化けて、収量も味も見違えたんです」と、加わった農家の富樫さんも驚きを隠せません。

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そんな大友さんたちが作る枝豆は、お盆明け頃に出始める「茶豆」と、10月上旬に最盛期を迎える晩生「秘伝」の2種。枝豆には大きく分けて「青豆(白毛豆)」「茶豆」「黒豆」とあり、甘みと旨みのバランスの良い「茶豆」は言わずもがな、「秘伝」は「青豆(白毛豆)」系で、大粒で食べ応えがあり、香ばしく濃厚な味わいです。

「枝豆として出荷できずとも、成熟した大豆になっても、んめぇんです。秘伝でみそを仕込む人も増えてますよ」と、大友さんたちも太鼓判を押します。言うは易し、行うは難しの自然栽培を、有言実行で行う大友さんとその仲間たち。その味を是非、一度ご賞味ください。

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生産者紹介

  • 大友惣兵衛

    生産者名 大友惣兵衛 詳細

    山形県の庄内地方にて、江戸時代初期より続く農家。16代目の大友真樹さんは栽培期間中、農薬や肥料を使わずに、自然栽培で滋味あふれる味わいの枝豆や大豆を作っている。今では近隣の農家仲間と「イザイネクスト」というチームを結成し、枝豆の自然栽培に取り組んでいる。

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