【みんなみの里】ご神託は「来年は早稲が豊作」| 吉保八幡神社 流鏑馬神事

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2019/10/03

 九月二十九日(日)、当店にほど近い吉保八幡神社において、流鏑馬(やぶさめ)神事がおこなわれました。

 こちらの流鏑馬神事は、鎌倉時代より稲作中心の長狭平野に伝わる千葉県指定無形民族文化財です。当時、この地域をおさめていた名将里見氏が、家来の武芸上達のために始めたものといわれています。現在では翌年のお米の作柄を占い、五穀豊穣を祈願する農耕神事としておこなわれています。
 吉保八幡神社前にある216mの馬場を禰宜(ねぎ、神馬に乗り矢を放つ人)を乗せた神馬が走り抜けます。禰宜は、馬上から三つの的めがけて矢を放ち、翌年の稲の作柄の吉凶を占います。
 この的は、早稲(わせ)・中稲(なかて)・晩稲(おくて)と、お米の収穫時期を表しており、駆け馬は三回おこなわれます。

 例年ならば前日に神輿や屋台が地区の家々を練り歩き、夕方にはみんなみの里の駐車場に集まって宵宮を迎えていました。しかし、今年は台風15号の被害を受けた家も多く、吉保八幡神社も鳥居などを破壊される被害を受けたこともあり、神輿と屋台の練り歩き、宵宮を取りやめました。


(こちらが本来の姿。赤い鳥居が美しく神々しい雰囲気でした。)


(こちらが当日の姿。台風15号により鳥居を破壊されたため、代わりに竹に〆縄をかけていました。)

 少々さみしい秋の例大祭となりましたが、「こんな時だからこそ流鏑馬神事はどんなことがあってもおこなおう」と祈りつつ、氏子たちは、がれきの片付けと神事の準備を同時に進め、当日を迎えたのです。

 この日、明け方から雨が降ったりやんだりとはっきりしないお天気で、神馬が走る馬場の状態が心配でした。
 そんな中、雨上がりの平野に大きな虹がかかり、その場にいた人達から歓声が上がりました。「虹の両端(下部)には宝物がある」と話し継がれている国があるそうです。もしかしたら、その宝物が光を放ち、大きな虹をつくっているのかもしれませんね。



 そんな素敵なお話を聞いていたら、虹の色がさらに鮮やかになり、とても幸せな気持ちになりました。

 午後3時頃、各地区の宮立(みやだち、神様が本殿の外に出る際に乗る小さなお宮)を先頭に弓矢と支柱・的を持った神官や氏子たちが続き、そのあとには、潔斎(七日間にわたり禰宜と神馬が寝食を共にし心身を浄める)を終えた神馬が禰宜を乗せて神社に到着。禰宜は拝殿に上がり、神馬は拝殿の前にて、祭典に参加したのでした。
 その後、神馬が少々ぬかるんだ馬場を二回走って足場を慣らしました。今年の神馬は、黒い毛並みがつややかな、とてもおとなしい馬で、観客から「きれい」「かわいい」といった声が上がっていました。
 その頃には、的をつけた三本の支柱が氏子たちによって田んぼの中に立てられ、準備は整っていったのです。

 午後4時頃、まずは露払いとして、神馬に乗った禰宜が手で矢を投げ、いよいよ流鏑馬神事が始まることを神々に告げ、いよいよ本番を迎えたのです。
 出発地点を三回まわったあと馬場に入って駆け出し、禰宜によって弓から放たれた矢が見事一番最初の的(早稲)に当たり、大きな歓声と拍手があたりを包み込みました。




 その後の矢は、的をすれすれにかすめ、そのたびに大きなため息があがるなど一喜一憂する様子は、まるで観客の皆さんが神馬と一体になっているように感じられたのでした。
 
 こうして、今年の神事により出たご神託は「来年は早稲が豊作」というものでした。
 たんなる占いにすぎないと思う方もいるかもしれませんが、意外と当たる場合が多いのです。
 じつは、昨年出たご神託も「今年のお米は早稲の実りが良い」と出ていました。事実、今年の早場米の作柄は良い状況で、それに続けとばかりに顔を出し始めた中稲のコシヒカリも、早めに収穫したものは問題なかったのですが、台風15号を田んぼの中で迎えてしまった稲も多くあり、昨年のご神託はこの事を指していたのかもしれません。
 今年出たご神託が「どの時期もよいけれど、中でも早稲が良い」という意味であるよう祈ります。 


 なかなか見ることのできない吉保八幡神社の奥に鎮座している本殿。




 その本殿の向拝や手挟みの彫刻は、鴨川が生んだ名彫工「初代 武志伊八郎信由」30歳台の作品と言われ、向拝中央の龍の裏には「彫工 下打墨住人 武志伊八郎信由作」と刻印もされています。
 江戸時代中頃に活躍した初代 武志伊八郎信由の彫り物は立体的なもので、「関東に行ったら波を彫るな」と多くの彫り物大工に言わせるほどの腕前だったため、「波の伊八」と呼ばれています。
 葛飾北斎が描いた富嶽三十六景の中の「神奈川沖浪裏」という作品に大きな影響を与えたといわれています。この作品、穏やかな“波”ではなく、荒々しい“浪”を意味しているのですが、伊八の彫るものも荒々しいものです。




 吉保八幡神社の本殿の向拝の彫刻もとても立体的で、中央にいる龍は今にも動き出しそうな雰囲気を漂わせています。
 鴨川市内の寺院で波の伊八の作品を見ることができます。ぜひご覧くださいませ。


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