空にむかって一心にぴん、と背をのばす茎の先には、花火のように開く淡い黄色の花。背丈ほどあるその中をかきわけながら畑に入ると、丸々と太った実を見つけました。勢いよく皮をめくると、あらわになった真っ白なとうもろこし。今年もパールコーンの収穫が始まったと聞きつけ、私たちは京都府久御山町にある村田農園を訪れました。
京都の伝統野菜に指定されている九条ネギの生産に、敷地のほとんどをあてている村田農園。私たちも2年前、この地を訪れ取材させていただきました。その時「ぜひ、夏にはパールコーンを見に来てください」と声をかけてもらったことを思い出します。
村田農園オリジナルのパールコーンはその見た目からもわかるように真っ白なとうもろこし。ひと粒、ひと粒が白く輝く様は、その名の通りまるで真珠のようです。村田農園では今年でパールコーンの生産が8年目を迎えたのだそう。
「まだまだ、手探りですね。最初の1、2年なんて失敗の連続でした。試行錯誤を繰り返し、1本の株に対して実は1つと限定することで、大きくて、糖度の高い実を実らせることに成功し、今年からは1本の株に実を2つ実らせられないか研究しているところです」
そう話す村田さんの瞳の奥に努力を惜しまない力強さが見えた気がしました。
一筋縄ではいかないパールコーンの生産。その収穫適期は4日しかなく、その期間を逃すと、味がのらなかったり、繊維質が残りやすくなるのだそう。では、どうして村田さんはそんなデリケートな野菜の生産に踏み切ったのでしょう。
「お客さんがあっと驚くようなものをつくりたいという想いが1番でしたね。やっぱり自分たちが納得したものを、おいしいと言ってもらえることが、農業を続けていくエネルギーになるんです」
「自分だけじゃない、従業員みんな、食べた人に感動を与えたいという想いは同じだと思います。食べものをつくる人間はこの気持ちを忘れたらだめですよね」
使い込まれた水色のコンテナには、ごわごわとした皮に守られたパールコーンが。
日々、従業員の方々みんなでその出来栄えを食べて確認するのだとか。「この時期は毎日パールコーン三昧で『今日はもう勘弁してくださいよ』なんて言われることもあるんです」と村田さんの目元にはやさしさがにじみ出ます。
畑一面に整列したパールコーンを目の当たりにすると胸の中がひらけていく感覚を覚えました。
「ぜひ、そのままかじってみてください」と手渡されたパールコーンに思わず目を奪われました。とうもろこしってこんなにきれいな食べものだったんですね。ぱん、と張り大きく揃った粒に歯を立てると、ミルクのような白い果汁が弾け、滴り落ちました。その果汁の甘さといったら、瑞々しくさわやかでいて、舌にじんわり広がるんです。野菜なのに果物みたいな気持ちの良さ。
野菜ってほんまに賢いんです、と村田さんは言います。
「野菜が葉をつけ、花を咲かせ、実を実らせる。そのすべてにはベストなタイミングと理由があるんです。僕たち農家はそれを理解し、水をやったり、肥料を加えたり、野菜が育つ助けとなってやることが大切なんだと思います」
大きくて、味の良い野菜を育てることが農家のすべてではないんですね。
自然と向き合うこと、地域と関わり合うこと、お互いを思いやること、そのすべてがパールコーンの甘みにあらわれているのかもしれません。
スーパーで野菜を選ぶとき、私たちは手にとった野菜の色つやや大きさ、価格でしか価値を見出すことができないでいます。でも、本当の価値はその目に見えていない部分に隠されているのではないでしょうか。
「生でも十分おいしいけど、粒をそいで天ぷらにするのもおすすめですよ」と村田さんの奥さまに教えていただきました。
パールコーンを食べたあと、不思議と素直な気持ちになるのはなんでだろう。持ち帰ったパールコーンにかじりつきながら考えていると、青空の下に広がるとうもろこし畑、農園のスタッフの方々の笑い声、村田さんの日に焼けたたくましい肌とパールコーンを見つめる穏やかなまなざしが頭に浮かびました。
青果売場では7月下旬までの取り扱いです。ぜひこの機会に村田農園の愛情がたっぷり詰まったパールコーンを食べてみてくださいね。
次回はキッチンカウンタースタッフが考案したパールコーンを楽しむ3つのレシピをご紹介します。お楽しみに。
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