【野々市明倫通り】和の心を灯す|高澤ろうそく店

和ろうそく

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2021/12/01

 
和ろうそく火

大きく縦に伸び、風が吹いても消えない力強さを持ちながら、優しくゆったりゆらぐ火。
燃え尽きる間際は、黒い芯の中をちいさな火が駆け抜けるように煌めき、ほとんど蝋(ろう)も残さない。
そんな最後の一瞬まで、日本らしい美しさが感じられる灯り、「和ろうそく」。
 
高澤ろうそく店

明治25年創業、石川県七尾市一本杉通りにある『高澤ろうそく店』。
日本古来より受け継がれてきた材料と方法で、和ろうそくを100年以上もの間作り続けている老舗です。
五代目 高澤久さんに、和ろうそくの美しさの秘密を伺うことができました。
 
芯づくり

現在、広く普及しているのは「洋ろうそく」と呼ばれるもので、「和ろうそく」とは区別されます。
奈良時代に仏教とともに伝来したと言われるろうそくは、日本で独自の発展を遂げてきました。
 
和ろうそく芯

和ろうそくと洋ろうそく、一番の違いは“芯”にあるそうです。
「ほとんど隠れている部分ですが、先人たちの積み重ねられた知恵と工夫が感じられる部分です」と高澤さん。
 
灯芯草

和ろうそくの芯は、筒状に丸めた和紙に、「灯芯草(とうしんそう)」と呼ばれる、イ草の茎から髄の部分だけを引き抜いて乾燥させたものを巻きつけ、最後に薄く広げた真綿で留めて作られます。

灯芯草は、ふわふわととても軽い素材で、溶けた蝋を吸い上げるスポンジのような役割を担います。
霧吹きで水を含ませながら丁寧に巻くそうですが、扱いが難しく、生き物みたいだとおっしゃる職人さんもいるそうです。
 
和ろうそく芯

芯が細い糸1本の洋ろうそくに比べ、和ろうそくは芯の中の空洞からも空気を取り込んで燃焼するため、特有のゆらぎをもった大きく力強い火になります。

この芯をろうそくの型にセットし、液状に溶かした蝋を流し込んで冷やし固めます。
高澤ろうそく店では、芯づくりから成型、検品、箱詰めまで、すべて手作業で行っています。



 
型

飛び出ているのは、ろうそくの先端ではなく、芯のおしりの部分です。
芯の先端は型の中にあり、蝋でしっかりと包みこむようにして作られます。
熱した包丁で底を綺麗に切り落してから、型から取り外していきます。
 
型から外す

黒く、どっしりとしている型は、鉄製と思いきや木製。
ひび割れや毛羽立ちを防ぐために、たっぷり水を含ませて使うため、木とはいえかなり重いそうです。
熱した包丁で綺麗に底を切り落してから、型から取り外していきます。
 
型から外す

洋ろうそくの主な原料が、石油由来のパラフィンワックスなのに対し、和ろうそくは植物から採れる蝋を主な原料とします。
植物蝋は人と環境にやさしいだけでなく、ススが出にくく、仏壇やお部屋を傷めにくい特長があるそうです。

日本で一番古くから使われているのは、ハゼの木の実から採れるハゼ蝋。
そのほか、菜種、椰子、漆の実、米ぬかからも蝋が採れるそうで、蝋によって出来上がるろうそくの色合いもさまざまです。
 
小刀で仕上げ

型から取り出したろうそくの先端を1本1本小刀で整え、最後に化粧仕上げ用の蝋に薄くくぐらせれば完成です。
化粧仕上げは見た目を美しくするだけでなく、実用面も兼ねた工程で、融点の異なる蝋を使うことで、蝋がたれ流れにくくなるそうです。
 
絵ろうそく

お花が手描きされた「絵ろうそく」は、もともとは雪国で生花が手に入りにくい冬場に、ご先祖さまへのお供え物として生まれたものだそうです。
石川県の中でも、能登地方は信仰心の厚い方が多く暮らす土地で、和ろうそくは朝晩のお参りにかかせない存在。こうして今も和ろうそく作りが続いているのは、この土地柄もあるのかもしれません。



 
溶かした蝋

工房を見学させていただいて驚いたのは、すこしたりとも材料を無駄にしないやり方で、和ろうそくが作られていることです。
大きな鍋いっぱいの蝋の中に浮いている白い棒は、ろうそくの芯です。
蝋は、溶かせば何度でも材料として使えるため、不良品となったろうそくも、切り落した部分も、大切な材料の一部。
芯も薪かまどの燃料として使われます。
ろうそくの木型についている蝋まで、ヘラを使って丁寧に集めて作業されている姿が、とても印象的でした。
 
高澤さん

「和ろうそくは、自然の恵みを分けてもらってできるもの。材料がなければ成り立ちません。我々はろうそくを作る立場ですが、ふるさとの風景を守っていく、その一端を担う責任があると思っています」と高澤さん。

昭和初期まではたくさんあった和ろうそくのお店も、今は県内では高澤ろうそく店のみ。
原材料を採る人たちも減り、山に人の手が入らなくなったことでバランスが崩れ、年々材料の採れる植物も減ってきているそうです。
和ろうそくの伝統を守り続けることは、先人の知恵と技術、そして人と自然の良い結びつきを絶やさず、つないでいくことでもあります。
 
高澤さん

「日本の里山の暮らしが、かたちになったものが和ろうそくです。日本で作られているとか、形がどうではなく、自然との関りが『和』なんです」

私たちが忘れてしまいがちな、自然の恵みやご先祖さまへの感謝を思い出させてくれる和ろうそく。
心までほんのり温かくなれるような灯りで、燃え尽きる間際、最後に見せる姿まで本当に綺麗です。
 
お参りの時はもちろん、ほっと一息つきたいとき、そして大切な人への贈り物としても。
もったいないと仕舞い込まずに、日常のいろいろなシーンで、和ろうそくを灯してみてください。
 
 
 

高澤ろうそく店
住所:〒926-0806 石川県七尾市一本杉町11
電話番号:0767-53-0406


 
 
無印良品 野々市明倫通り

 

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