こんにちは、BOOKS1号です。
今週、読んでおすすめする本は『とりとめなく庭が』です。
1篇4ページからなるエッセイ30編を、30点の挿画が彩ります。詩人である著者が選ぶ言葉の一つひとつに想いが溢れています。
『とりとめなく庭が』
出版社:ナナロク社
著: 三角みづ紀 イラスト:さとうさかな

母は、豆を煮るのがとても上手です。冬になると、大量の大豆を大きな鍋で、小さなとろ火でくつくつと。
豆とともにいろんな具材が投入され、ふわりと出汁の香りが、家中にひろがります。
「味、薄いかな?」いつも言うお決まりの言葉です。
著者は、祝日の夕方に黒豆を煮るそうです。それは、食べたくなったからではなく、豆を煮る行為が、気持ちを安定する作用があるからだとか。
ふと、母も同じかも……と思いました。母も豆を煮ることで、気持ちを安定させているのかもしれません。
高齢になった今も、家業の仕事や教室を開いている母。あの小さな体に、パワーがどこに潜んでいるのかと思うくらい、かいがいしく働いています。
こんなことを書いていて、実は煮豆が好きでない私……。
でも、母の出汁のきいた煮豆が恋しくなり、食べたくなりました。あと何回食べられるだろう。そう思うと、急に涙がじわりとしてきました。
「煮豆、作って。作り方、教えて」
そう言ってみようと思います。
著者の言葉は、たやすく紡がれてはいません。心の片隅にすっと入ってきて、ありふれていた毎日の視点に、みちみちとした感情をもたらしてくれるでしょう。ぜひお手に取って読んでみてください。
「私とこの本」で紹介の本は、今日のずっといい言葉の黒板の下にあります。
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