私たちは普段食べているものがどんな土地で生まれ、どうやってつくられているのかを知っているようで知りません。そもそも世界は知らないことだらけで、新しい発見や気づきがあるたび、世界を味わえている気がしてうれしくなるのです。自分が食べている野菜のつくりかたをこの手で土を触って知りたくなった私たちは三浦農園の“畑のオーナー制度”を利用し、伝統野菜『泉州黄玉ねぎ』を育ててみることにしました。その様子をレポートにして皆さんにお届けします。
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大阪府南部、関空国際空港にほど近い泉佐野市で家族三代で農業をされている三浦農園さん。江戸時代から100年以上続く三浦さんの畑では、泉州水なすや泉州キャベツ、なにわ伝統野菜などたくさんの野菜を育てていらっしゃいます。
当店の青果売場には、開店以来ずっと三浦さんの野菜が並んでいます。また、生産者のみなさんに直接販売していただくつながる市のマルシェにも参加してくださっています。
そんな三浦農園さんは、なにわの伝統野菜のひとつ『泉州黄玉ねぎ(せんしゅうきたまねぎ)』を未来につなぐ活動をされていて、“より多くの方に知ってもらう、食べてもらう、楽しんでもらう”をテーマに、今年からオーナー制度をはじめられました。
希望する区画分だけ畑のオーナーになれるオーナー制度。『泉州黄玉ねぎ』の苗の植え付けと収穫に参加することができ、お願いすれば他の作業を手伝うことも可能。収穫した『泉州黄玉ねぎ』はすべて持ち帰ることができます。生産者の三浦さんといっしょに農業ができて自分の畑を持てる、夢のような制度です。
今回私たちはそのオーナー制度に賛同し、11月末に苗の植え付けへ行ってきました。
とはいっても、小さいころに芋掘りをしたことがあるぐらいで、農業経験のない私たちでも大丈夫なのでしょうか……。不安と期待に胸を膨らませつつ、三浦農園さんへ向かいました。
寒さを気にしていましたが、やわらかい日差しが心地よい天候に恵まれました。
車が行き交う大通りを離れていくにつれ、少しずつ緑の畑が見えはじめます。畑の前で笑顔で迎えてくれたのは、三浦家長女の麻衣さん。
私たちは動きやすい服装で、手ぶらでの参加。苗など植え付けに必要なものは準備してくださっていました。
さっそく畑にはいり、自分たちの区画にしるしをつけます。
泉州地域のたまねぎ栽培の歴史は古く、なにわの伝統野菜『泉州黄玉ねぎ』には、今井早生(いまいわせ)、貝塚早生(かいづかわせ)、吉見早生(よしみわせ)と3種類あります。UFOのような扁平な形とみずみずしく甘みが強いのが特徴で、加熱することでさらに甘みが増すそうです。市場にはあまり出回っていないとか。
今年は貝塚早生を育てているそうです。
植え方のコツをしっかり聞いて、いよいよ作業開始です。
「苗は曲がっていない、まっすぐで細すぎないものを選んでください。埋めるのは白いたまねぎになるところ。土は風に飛ばされない程度にかけてあげるだけで大丈夫ですよ」
1つの苗を等間隔に開けられたシートの穴へ植えていきます。
畑の土はふかふか。すっと指で穴を掘ると同時に苗を入れていきます。こうやって土に触れるのはいつぶりでしょうか。なんだかとっても懐かしい気持ちになりました。
これで大丈夫かな。ちゃんと育っていくのかな。
そう不安になったのも最初だけ。どんどん楽しくなり夢中で手が動いていきます。
麻衣さん、『泉州黄玉ねぎ』を栽培しようと思ったきっかけってあるんですか?
「最初はあんまり深く考えてなくて、“泉州でつくられてる黄色い玉ねぎって、なんなんやろ?”って思ったのがきっかけです。実際にやってみたら扁平で大きさも不ぞろいで、選別も大変。みんなが栽培しなくなった理由がわかりました。だから私らが伝えて、みんなに知ってもらえたら変わっていくのかなって」
気がつくと私たちは立ったりしゃがんだりして、少しずつスピードも落ちてきましたが、麻衣さんの動きはまったく変わりません。でもどこか気持ちの良い疲れ。きっとこの開放的な自然の中にいるからですね。
「オーナー制度をはじめたのも、泉州でせっかく昔からあるのに、誰もしなかったら知らないままの人もいるから。
自分で植え付けしたものって、送られてきたものを家で食べるより愛着がわいてくるというか、ちょっと違うと思うんです。」
愛情込めて、手間ひまを惜しまず、野菜としっかり向きあっていらっしゃる思いを聞いていると、今日ここに来てよかったとあたたかい気持ちになりました。
今後も畑を訪問した様子をおたよりしますので、私たちといっしょに成長を楽しみにしてくださいね。
三浦農園
住所:大阪府泉佐野市鶴原1903
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無印良品 イオンモール堺北花田 2020.12.28