【堺北花田】ちいさな花がつないだ軌跡

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2024/06/07

 店内キッチンカウンターの近くには、地域の資源や食文化を活かした商品がたくさん並んでいます。
 そのなかでも特に人気なのが、桃やぶどうなどをつかったシロップシリーズ。本日6月7日(金)から新たに『古都華いちご いろいろ使えるシロップ』が仲間入りしました。
 
【堺北花田】ちいさな花がつないだ軌跡

  
 こちらのおたよりでは、古都華いちごのふるさとである奈良県を訪れた様子をお伝えします。

 雪がちらつき、ひんやりと北風が頬をさす1月のとある日、私たちは奈良県横井にある萩原いちご農園へやってきました。
 
 奈良県といえば、東大寺の大仏や鹿が有名ですが、今や『古都華』も立派な名産品。
 古都華は、2010年の平城遷都1300年祭をきっかけに、古都・奈良に新しい華を添えられるようにという意味が込められ、翌年2011年に品種登録されたいちごです。
 
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 古都華の特長には、甘さや大きさ、他のいちごと比べて形が整っていることが挙げられます。「古都華はお客さんのニーズに100%答えたようないちご。普通は生産者のニーズともバランスがいいものを開発するんですけど、当時は奈良もえらい品種開発しよったなって」そう話してくれたのは生産者の萩原さん。

 生産者の方にとってメリットとなるのは、つくりやすさや採れる量の多さ。しかし、古都華はその逆で採れる量が少ない品種。他のいちごと比べても特に育てにくいのだそうです。
 
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「環境整備して、しっかり管理していても100%思い通りにはならない。いちごを生産しているというよりは、彼らが育つのをお手伝いしているような感じやね」

 古都華だけでなく、いちごは他の作物と比べてつくるのに時間がかかる作物。一反のいちごに対して管理するのに必要な時間は一年で約2000時間といわれています。いったいどのようにいちごができるのだろうと、わくわくしながら萩原さんにお話を伺いました。

 いちごづくりが始まるのは2月から。来年植える苺の親となる苗を育てはじめ、そこからできたこどもの苗をとって、収穫用の苗を育てていきます。だんだん温かくなってくると、「ランナー」という、元の苗とまったく同じクローンができるので、そこからいちごを収穫します。

  去年採れたいちごから苗を採るのが本来の方法ですが、萩原いちご農園では、たとえ時間や手間がかかっても、食べる人が笑顔になるようないちごをつくれるよう、毎年新しい苗を育てているそうです。
 
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 取材に訪れたのは1月中旬でしたが、ハウスの中はまるで春がやってきたかのようにとても暖かく、日差しも降り注いでぽかぽか陽気。本来、いちごの旬は4月~6月ですが、ハウス内を暖かくすることで12月からでも採れるようにしているのだそうですよ。

ハウスの中で一緒にいちごを育ててくれるのは、ミツバチ。
 
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 いちごから蜜は採れませんが、蜜を集めようとハウスの中を飛び回ります。取材中も身体じゅう花粉でまっ黄色になったミツバチが、花にとまっていました。
 
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 こうしてミツバチに受粉を手伝ってもらった花は、少しずつ花弁(かべん)が落ちて真ん中の花托(かたく)が膨らみ、やがて、いちごになります。

「クリスマスに採れるようになったのも、実は奈良の技術開発がきっかけなんですよ。内緒にしておけばいいのに、奈良の人は優しいから、みんなにこの技術を教えちゃったんで、全国にこの技術が広まったんですよね。技術の積み重ねや生産者のノウハウも古くからあるので、古都華のように育てるのが難しい品種でも、つくってみよう、改良してみようと考えられるのも奈良県だからじゃないかな」と萩原さんは語ります。
 
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 いちご農家の長男として生まれ、日々、試行錯誤を重ねながらいちごを育てる萩原さん。その経歴は意外なものでした。

「農家の家に生まれたから、両親は土日も休みなし。特に僕が小学生の頃は、お父さんはサラリーマンでお母さんは専業主婦という家庭が多かった時代やから、友達から休日の楽しい話を聞かされる月曜日がいちばん憂鬱でした。家族揃って夜ごはんを囲むこともほとんど無くて、将来何になりたいかは決まってなかったけど、農家にだけはなりたくない。という想いはありました」
 
 その後、高校や大学も農業と関係ない道を選んだ萩原さん。いったい何がきっかけで考えが変わったのでしょうか。

 それは大学時代、ちょうど就活真っ最中の頃に大学の先輩と食事に行った際、一年前には会社への憧れやいいことばかり語っていた先輩が会社の「負」の部分ばかり話していたそう。
 
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「そんな先輩の話を聞いてて、ふと思ったんです。農家のええところはなんにもわからへんけど、嫌なところならいくらでも知ってる。嫌なところが明確に分かっているんなら、自分がそこを変えられるんちゃうかって」

 そう思った萩原さんは、早速ご両親に明日から雇ってもらえないかと頼み込んだそうです。

「昔は農家って土にまみれて汚い、しんどそうというイメージをずっと持ってて、農家であることを負い目に感じてたんです。それが他業種の人と話すときに、すごいやん!うちのこどもがいちご大好きなんです。って、目きらきらさせながら話してくれて。俺がつくってるいちごってすごいんや。って思うようになりました」
 
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 萩原さんにとって一番の転機は古都華に出会ったこと。
「いろんな人に出会えて、いろんなことが出来るようになったのも、古都華が僕にいろんな経験を与えてくれたおかげ。もちろん苦しめられることもあるけど、やっとここで生産者に優しくなってくれたかって」
 
 今では、新規就農者の受け入れやスポーツ選手のセカンドライフのサポートなど、地域の課題にも取り組んでいるそうです。
 
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「農家って、この場所って決めたら一生ここから動かないわけですよ。ほんまの意味での地域密着産業で。こうしていちご農家としての生業をやっていくと地域に何か還元していけるようなことを進んでやっていくべきではないかなと思っています」
 
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 農家にだけはなりたくない。そう言っていた小さな少年は、今やいちご農家の誇りを持ち、地域課題にも取り組みながら一生懸命いちごを育てています。

 ちいさないちごの花がつないだ、大きな軌跡。
 私たちが普段何気なく食べているものには、産地の人たちが紡いできた、たくさんの物語があります。私たちはこれからもずっと産地に教わり続け、その背景にある物語を伝え続けていきます。
 
 
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