【堺北花田】人も、街も、しいたけも

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2022/11/11

 皆さんは大阪の野菜というと何を思い浮かべますか。泉州の水なすに玉ねぎ、松原の難波ネギ、美原の古代米。私たちはこれまでもたくさんの農家さんを取材してきました。まだまだ紹介しきれていないものもたくさんあります。

 今回ご紹介するのは、大阪府西成区でつくられている『よろしい茸』。西成区といえばどちらかというと工業が盛んな印象ですね。
  
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 私たちは今回、西成区にある街かどあぐりにしなり よろしい茸工房を訪れました。

 出迎えてくれたのは代表の豊田さん。「ここまで電車乗り継ぐの大変やったでしょ。よく来てくれました」と優しく迎えてくれました。
 
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 よろしい茸工房は「農と福祉の連携プロジェクト」という事業に携わっており、高齢者の健康づくりや障がい者の就労訓練・雇用など、農作業を通じた活動の場として、たくさんの方のサポートもされています。
 
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 豊田さんの案内でさっそく工房の中へ。敷地内はとても大きなビニールハウスが何個も連なっています。
 
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 最初に見せてもらったのはしいたけの収穫場所。一面に並んでいるこの四角い土の固まりのようなものは菌床(きんしょう)と言い、ここからしいたけがにょきにょきと生えてきます。

 一つの菌床から収穫できるのは2~3回。合計で550gぐらい採れるのが理想だそうです。

 1回目の収穫ではぶわーっとたくさん生えたしいたけを間引きし、より良いしいたけができる状態にします。収穫が終わったら一度菌床を休ませます。水をたっぷり入れたプールに菌床を入れ、水を吸わせてから休養棟と呼ばれる部屋で休ませます。
 
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 菌床がなくなった棚はスタッフの方が歯ブラシなどを使って棚の裏側まで徹底的に磨き上げ、丁寧に洗います。栄養たっぷりの菌床はしいたけだけでなく虫も好みます。

 一度、この工房も虫の被害に遭い、消毒のため菌床を全て廃棄したことがあったのだとか。その経験から、清掃は数ある業務の中でもより真剣に取り組んでいるのだとか。
 
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 2回目、3回目は1回目と比べると量は少ないですがその分栄養をたっぷりもらった立派なしいたけができます。
 
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 収穫を終えた菌床は廃棄となり、畑の肥料として地域の支援学校などに提供しています。しかし、提供するよりも廃棄される量が多く困っているのだとか。菌床の再利用についてもよろしい茸工房では一つの課題として問題解決に取り組んでいます。
 
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 収穫されたしいたけは、工房で選別を行います。オレンジのかごに入っているのは割烹料理など、刻んだりせずにそのままの形で出されるようなしいたけ。かさが開いておらず、円の部分が切れていないのが特長です。
 
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 一方、こちらの青いかごに入っているのは炒めたり刻んだりして加工品として使いやすいしいたけ。どちらも全て手作業で、ひとつひとつスタッフの皆さんが選別しています。

 続いて、菌床づくりも見学させてもらいました。
 
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 まずは培地(ばいち)と呼ばれるしいたけのベッドをつくります。広葉樹のおがくずに栄養体と水分を入れてほどよい水分量になるまでミキサーでかき混ぜます。土のように見えていたのはこれだったんですね。
 
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 これを袋に詰めて平らに馴らし、専用の道具を使って菌を入れるためのくぼみをつくります。
 
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 「これ、うちの職員の手づくりやねん。うちは皆が同じように作業できるわけじゃないからね」と豊田さん。色んな人が集まる場所だからこそ、こうした工夫もされているんですね。

 くぼみをつくった培地は100℃の窯で8時間蒸し、雑菌をなくします。そのあとは20℃になるまで冷やし、ようやく出来上がりです。この作業は朝5時からすることもあるのだとか。
 
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 出来上がった培地を専用の部屋に移し、しいたけの菌を植えます。この部屋に入れるのは2人まで。無菌の状態で菌を植えるため、雑菌を増やさないためのルールとして確立しています。

 菌が植えられた培地は菌床となり、菌床室へ移動します。植えた菌が培地に行き渡るよう、ここで育てるのです。
 
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 実際の菌床を見てみると、最初に見たこげ茶色とは違って、まるで発泡スチロールのように白くぼこぼこしています。これは菌が菌床のなかでちゃんと活動している証拠。ここから徐々に色が変わり、こげ茶色へと変わっていきます。
 
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 「菌床によって温度にも好みがあるのよ。この子は涼しいほう、そっちの子はあったかいほうが好きってね」と菌床の成長を見守る豊田さん。こんなことも教えてくれました。

 「昔は菌床の重さは1個2500gにしてたんやけど、腱鞘炎になるのも心配やし、うちは女性スタッフも多いから1800gに変えたの」

 もちろん菌床の重さ軽くすることで、それだけ収穫量も減ってしまいますが、色んな人が集まる施設だからこその工夫や豊田さんをはじめ、職員の皆さんの優しさが感じられました。

 今回、私たちが工房を見学していてふと気になったものがあります。それは工房の至る所にあるこのような目印。
 
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 菌床づくりの時にも話がありましたが、色んな人が集まるこの施設はみんなが全く同じようにできるというわけではありません。そのため、工房内にはこうした目印がたくさんあるんです。

 「例えばきくらげってカッターで切り落として収穫するんやけど、カッターに菌がついていたらダメになってしまうのね。だから必ず消毒するんやけど、時々それを忘れてしまうこともある。その時は厳しく叱るんじゃなく、何割までは超えたらあかんよって決めるようにしてるの」細かなところにも豊田さんの優しさを感じました。

 どうして『よろしい茸』なんですか?との取材スタッフの問いに、「おいしいよりよろしいのほうが馴染み深く感じたんよね。ほら、関西の人ってよろしいやんとかって言うでしょ」

 今では名前の覚えやすさから、イベントでもよろしい茸を認知してくれている方が増えたのだとか。
 
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 大阪の真ん中にある西成でしいたけをつくることで、新鮮な状態で届けることができるし、なにより西成を盛り上げたかった。今では誇りを持っているし、自信をもって西成産ですと言える。と西成で始めた理由についても教えてくれました。

 取材の最後に、取材スタッフがこの仕事をしていて、一番うれしかったことは?と尋ねると、豊田さんがとある出来事を話してくれました。

 家庭環境の理由から、親元を離れて暮らすことになった方がいました。豊田さんがよろしい茸の事業を立ち上げる際、その方が入って自立ができるようにとグループホームへの入居を勧めました。
「2年間だけ辛抱しよう。2年間であなたがしっかり自分で生活できるようになったら、ここを出てマンションを借りてもいいんじゃない」豊田さんのその一言で入居を決め、それからの暮らしは一変したといいます。
 
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 「ちゃんと休まずに仕事に来てくれたし、お金も自分でしっかり管理できるようになったんです。今ではその子は一人暮らし。自分の力でここまで頑張ってくれたのがほんまに嬉しかった。今やっと一人それが叶ったから、それが2人、3人と増えていくことが楽しみであり、希望なんです」仕事の枠を超えた豊田さんの愛の大きさに、胸がじーんと熱くなりました。

 でもそういうのって、どれだけ与えたり何かをしてあげても、本人が変わりたいとかやらなきゃって想いがないと難しいですよね。
 
 「その子自身の考え方もあるし、自分でどうしたいって想いを持ってないとダメ。時にはうまくいかない子もいたし、やっぱりその子次第やね」全てがうまくいくわけじゃない。その人を支えてあげたい気持ちはあっても、実際に支えることって難しいなと改めて感じさせられます。
 
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 「うちに来ている子たち一人ひとりの将来設計やライフワークをつくってあげて、そこにどうのせていくかも大切やからね。本来はここにずっといるのではなく、就職して巣立っていくっていうのを目指してほしい」と語る豊田さん。一方でこんな想いもあります。

 「半分職業で、もう半分が福祉なのがこの施設。もし一般企業に就職したとしたら、福祉の部分って無いわけやん。それに耐えられるのかという問題もある。ステップアップにもならないから、本来こういう施設はつくるべきではないと思うのよ。でも同じ給料なら、色々サポートしてあげられるほうがいいのかなとも思う」と打ち明けてくれました。

 企業を立ち上げるだけでも大変なのにどうして始めようと思ったのか、きっかけは何だったのでしょう。
 
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「私もなんでだろうってよく振り返るんやけど、あの時は何か突き進むものがあったんよね」

 豊田さんが元々されていたのは不動産業。その時に障がいをもつ方との交流があり、施設と企業を結び付けるだけでなく、一度その子たちを育てる仕事もしてみたいと思ったのがきっかけなんだとか。

 「実際やってみたらこんなに大変やとは思わんかったけどね。これでもういいわとはいかないし、あれもこれもいるやん。やめられへんなって」笑いながらそう話してくれた豊田さんですが、その言葉には人の人生を支えていくという強い信念が垣間見えました。

 今では色んなところで見かける機会が多くなったよろしい茸。イベントに出店して欲しいとの声もたくさんあるのだとか。

 「ありがたいことにイベントの話もたくさんいただけるの。しんどかったら断ればいいのにって思うんやけど、困ってはるし断られへんやん。お客さんと接しているときが楽しいし、好きやから次も頑張ろうって思うねん」ほどほどにしとかんと、と言いながらもどこか嬉しそうな豊田さんに「誰かのためにって動いちゃうんやね。大阪のオカンらしいな」と藤林シェフ。
 
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 時には豪快に、時にはやさしく見守るなんとも大阪のオカンらしい豊田さん。人も街もしいたけも。全部丸ごと包み込んでくれるオカンの大きな愛がそこにはありました。

 
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