【京都山科】お酢の話|食べものの話をしよう

【京都山科】お酢の話|食べものの話をしよう

食のお便り/入荷情報

2021/11/17

 私たちが生きるこの世界には、さまざまな食文化があります。先人たちによって今日まで絶えることなく継がれてきたおいしさの中には、食という営みそれ自体のおもしろさや、もしかしたらより良く生きるためのヒントが隠されているのかもしれません。ふだん当たり前だと思って口にしている食材や素材をもういちど見つめてみると、あたらしい発見や学びが必ずあります。
 地下1階の食品売場を歩きながら、私たちと一緒に、食べることについて考えてみませんか。

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 酢の物、お寿司、甘酢あん……。料理の基本「さしすせそ」にも含まれる酢は、私たち日本人にとって馴染み深い調味料ですよね。私も毎日と言っていいほどもずく酢を食べるお酢好き。でも、よくよく考えるとお酢ってどうやってできているのか、なんでこんなに酸っぱいのか、知らないことがたくさんあります。
 
【京都山科】お酢の話|食べものの話をしよう

 今回は、創業江戸享保年間。京都でお酢をつくり続ける『村山造酢』の村山さんにお越しいただき、お酢の不思議をお伺いしました。
 そもそもお酢はお酒を酢酸菌で発酵させてつくる発酵調味料だということをご存知でしたか。お酒をもとにつくられる酢はお酒と同様、人類と同じくらい古い歴史を持つんだそう。贅沢品だったお酒と比べ、当時から広く庶民に親しまれたお酢は食用や薬として使われてきたのだとか。
 たしかに、「酢」という漢字を解体してみると、「酉(酒)」と「乍(たちまち)」という字になりますよね。
 
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(麹をまとった麹米)

 お酒がお酢になる不思議は、お酒に酢酸菌を加えることで、酢酸菌がアルコールを食べて酢酸に変化するというもの。米から酒をつくり、酒から酢をつくる、そのどの工程にも人の技術と研ぎ澄まされた感覚が必要です。日本では米を原料とした米酢が一般的ですが、世界各国、その土地で採れる果物や穀物からもつくることができるんですよ。こんなにも手間ひまのかかるものなのに、ずっとつくり続けられてきたという歴史に、日本だけでなく世界中の食卓に欠かせない調味料だということがわかりますね。
 
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 村山造酢の代表的な商品といえば、京都府民に古くから愛されてきた『千鳥酢』。この印象的なパッケージと名前は、加茂川で千鳥が群れ飛んでいた様子を詠んだ「加茂川や清き流れに千鳥すむ」という古歌から由来しているのだと、お話上手な村山さん。

 「米と熟成酒粕でつくったお酢は、お酢特有の香りを抑えどんな料理にも合うようにつくっています。料理の邪魔をしないまろやかな味というのが千鳥酢の目指す味なんです」
 
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 1~2年寝かせた酒粕はお味噌のようで、奈良漬けに似た甘い香りがします。
 
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 カップに注がれた千鳥酢はきれいな琥珀色。鼻につんと届く香りを感じながら恐る恐る舌にのせると、少し刺激はあるけれどまろやかな酸味に唾液が出て、からだが湧きたちます。キレが良く遠くに酒粕の旨みを感じます。
 
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 こちらは、お客さまの声から生まれた純米酢『純米千鳥酢』。

 「米のみでつくるお酢は米の旨みがよく出るんです。だから、さっぱりとやわらかな甘みがある、京都南丹市産キヌヒカリというお米を使いました」

 また、村山造酢さんは南丹市でお酢づくりの際にできる使いみちのない酒粕をつかって、液肥をつくり、それを水田に戻して米づくりの肥やしとする循環型の取り組みを進めているのだそう。
 
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 『千鳥酢』(左)と比べてみると色が薄いですね。米の香り、コクのある味わいは先程よりもやさしいお酢に感じます。甘さもあって酢飯に良さそう。

 その他にもお酢の利用例として
 ローストビーフを漬けてお肉をやわらかくしたり
 おにぎりに混ぜて傷みにくくしたり
 れんこんやごぼうをより白く仕上げたり

 健康的に注目されるお酢ですが、うまく使うことでいろんな良いことがあると村山さんが教えてくれました。お酢をつかったくらしのコツはおまじないのように伝え継がれてきた知恵袋みたい。
 海から遠い京都では食材の保存や友禅染めの色止めに酢が多く使われた歴史もあり、当時はたくさんお酢屋さんがあったのだそう。それがいまでは京都府内で5件ほどに減少したと言います。食生活の変化で若い世代のお酢離れが嘆かれるいま、「お酢の良さをもっとたくさんの人に知ってほしい」と村山さんは話します。

 「発酵とは人の技術のかたまりだと思うんです。そして守り継がれてきた伝統は川の流れのようなもの。今良いとされているものもいつかは途切れてしまうかもしれないし、途切れてしまったものが見直されることもあるかもしれないですよね。醸造の世界はそういった伝統の中で長く大切にしてこられた文化だと思います」

 村山さんはお酒づくりの現場で修業し、その経験が酢づくりに生かされているのだそう。そんな村山さんだからこそ、つくる人の想いまで届けてくれるんですね。
 
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 毎日摂っているお酢も改めて味わってみると、飲んですぐにぽかぽかと温かくなって、眠っていた器官も目覚めるようで、からだが呼応しているのを感じます。お酢はからだの不調や食卓、心までもリセットしてくれるものかもしれません。貯め込んだ淀みや悩みも「酸っぱい!」という一言で浄化されたようにすっきりとするんです。

 いろんなお酒から出来たお酢、果物から出来たお酢、酸っぱいのやさしいの。当店の地下1階でもいろんな種類のお酢を販売しています。自分にあったお酢が見つかったら、毎日大さじ1杯のお酢生活をはじめませんか。


村山造酢『千鳥酢』360ml 消費税込 592円
村山造酢『純米千鳥酢』500ml 消費税込 734円


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