【京都山科】想いでふくらむ、一粒一粒|現場取材レポート

【京都山科】想いでふくらむ、一粒一粒|現場取材レポート

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2023/04/03

 朝、淹れたてのコーヒーがおいしいのは何でだろう。疲れたときコーヒーが飲みたくなるのは何でだろう。豆を挽いてお湯で落とした黒くて苦いコーヒーがからだに沁みるのは何でだろう。
 古くからお茶がくらしの中にあった京都は、お茶を飲みながら語り合う、ということが自然と行われてきました。そして、喫茶文化の広がりとともに、京都に住む私たちにとってコーヒーは相棒のような存在です。

 私たちはそんなコーヒーをこの山科の町で焙煎している人たちと出会い、春を目前にしてうっすらと雪の積もった2月下旬、清水焼の郷・清水焼団地にある〈Kaikado Roastery〉の工房を訪ねました。
 
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(写真:右 川口さん 真ん中 井上さん 左 青木さん)

 迎えてくれたのは、お揃いのユニフォームを着た〈Kaikado Café〉店長の川口さん、スタッフの青木さん、〈Kaikado Roastery〉焙煎人の井上さんです。真ん中にどっしりと構える焙煎機や麻袋、細かく書き込まれたバインダーなど、働く人たちの息遣いが聞こえてくるような工房にはコーヒーの香りが満ちていました。
 
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 「〈Kaikado Café〉では焙煎人・中川ワニさんにつくっていただいたオリジナルブレンドを提供しているのですが、ワニさんのコーヒーに込める想いに触れ、自分たちもその考えを学び、つないでいきたいと思い自家焙煎という挑戦をしました」と話す川口さんは、プライベートでもコーヒー好きで開化堂の一ファン。手でつくられた工芸品に癒されていたと嬉しそうに教えてくれました。
 そもそも、〈Kaikado Roastery〉の母体となる〈開化堂〉は、京都で約150年の歴史をもつ、手づくり茶筒の老舗。〈Kaikado Roastery〉は、その開化堂が茶筒や珈琲缶などの伝統工芸品の使い心地の良さを感じて欲しいと開かれた〈Kaikado Café〉の自家焙煎所です。

 「もともと開化堂と縁のあった山科に茶筒をつくる工房を設けていたので、その奥に焙煎所をつくったんです」

 それから、半年以上かけて中川ワニさんから焙煎の技術を学ばれたのだそう。
 
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 「技術だけじゃありません。コーヒーは調理、という考え方もそうです。レストランのオーナーがその日の良い食材で料理をつくりたいと思うのと同じで、飲む人においしいものを届けたいという気持ちが一番にあります。だからこそ、コーヒーを採れたてのお野菜のような感覚でお客様のもとに届けたいんです。」

 コーヒーは生鮮食品。そのことを、無意識に消費するばかりのくらしの中で忘れていたのかもしれません。食材を丁寧に扱うこと、食べる人のことを想って調理すること、そんな思いやりまで受け継がれているのですね。カフェスタッフのみなさんも生豆の下ごしらえをお手伝いされることがあるそうで、「少人数のチームですから団結力は人一倍です」と青木さんが朗らかな笑顔を見せてくれました。
 
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 特別にコーヒーの焙煎を見学させていただきました。焙煎人の井上さんは焙煎中何度も豆を取り出し、鼻を近づけたり、ひねったり、豆と向き合う表情は真剣そのもの。焙煎機は200度ほどの高温にもなるそうですが、そんな大きな機械を一人で操作する姿は堂々としています。〈Kaikado Roastery〉の焙煎人の募集情報を知って、思い切って飛び込んだという井上さん。デスクの端にはこれまでの焙煎の記録が重なっていました。

 「お客さまに出せるまでが一番不安でした。でもそれを拭うことは出来なくて、自分たちの焙煎を続けるしかなかったけど、おいしいと言ってもらえたり、リピーターの方が少しずつついてきて、自信が出てきたなって感じています」
 
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 焙煎したての豆で淹れてもらったコーヒーは驚くほどにフレッシュ。豆に封じ込められていた香りが爆発したかのように、一気に鼻から身体に届きました。しっかり苦味とコクはあるけれど、すっきりした後口で飲むたびに新しい気持ちにさせてくれます。

 「今日の出来栄えはどう?」と聞く川口さん。照れた様子で「星3つつけたいですよ」と笑う井上さんに、「私たちもおいしいと思っているから、自信を持ってお客様にすすめられます」自分で言うのもなんやけど(笑)と付け加える青木さん。まるで家族のような3人の温かい空気にとても安心したのを覚えています。
 
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 帰り際、「これ見てください」と嬉しそうにする川口さんが見せてくれたのは、にやっと笑う口や宇宙人の顔に見えるコーヒー豆のコレクション。これらは本来欠点豆として弾かれるのだそう。無数の豆から小石や糸、欠けた豆などを取り除く、気の遠くなるような作業のなか、「僕たちとうとうこんなところまできちゃいました」と話す目はコーヒーへの愛おしさに満ちていました。
 
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 「コーヒーって同じ量、同じ温度、同じ淹れ方でも、淹れる人のおいしいが出るんです。それはおいしいとかおいしくないとかではなくて、丸かったり、若かったり、その味や香りにそれぞれの人を感じてもらえたらいいなと思っています」

 そう話してくれた青木さんのやさしい声を思い出すと、小さな工房で話したことや香ばしい香り、3人の笑顔が浮かんできて、なんだかコーヒーが飲みたくなってきました。今日は仕事帰りに〈Kaikado Café〉に寄ってみようか。あの人たちに会えるだろうか。きっと今日の1杯は昨日の1杯とも違うはず。


〈Kaikado Café〉や〈Kaikado Roastery〉をもっと知りたい方はこちらをご覧ください。
Kaikado Café HP
Kaikado Roastery WEB SHOP




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