「探しものや手間が減ると、人にやさしくなれる」能登屋英里さん

整理と収納 能登屋英里

おたより/心に余白を生む、整理と収納

2024/12/26

 仕事や家事、あわただしい毎日の中で、自分自身と向き合う時間やゆとりはありますか? 暮らしの空間は私たちの心と深く繋がっています。少し立ち止まって、モノのいる/いらないの区別をして、 定位置にモノを収めることで、「あれどこ?」とモノを探す時間や、「今日、何着よう?」と迷う時間も減り、脳の一日の情報処理のキャパもたっぷり残せる。すると、新しいことへの意欲がわいてきたり、長年の課題の解決策が浮かんだり、さらには人へのやさしさも自然と出てきます。この連載では、心がほぐれ、気持ちが落ち着く整理と収納を楽しむ方々を紹介します。初回はビジュアルコンサルタントの能登屋英里さん。          
( 取材と文・竹村真奈 撮影・西沢將弘)

 

整理と収納 能登屋英里

能登屋英里のとや・えいり
ビジュアルコンサルタント。リノベーションした住まいで3人暮らし。無印良品では住空間のVMDアドバイザーを務める著書『小さなスペースで楽しむ模様替え』翔泳社がある。
Instagram: @eiriyyy_interior

「部屋のどこを見ても、ゆったりした気持ちになれるよう、好きなモノだけを置きたい」

 

前職のアパレル会社で、売場やディスプレイを作る仕事をしていたという能登屋さん。そこでインテリアへの興味が深まり、さらに結婚・出産をきっかけにいかに暮らしやすくするかを考える機会が増え、整理収納アドバイザーの道に進んだそう。

「築50年・52㎡の狭小マンションを自分でフルリノベした経験を活かしながら、狭いからこそ飽きない工夫を心がけています。実はモノは多いほうなので、空間の余白は少ないかもしれないのですが、本当に好きなモノだけを厳選しているので、何気なく部屋のどこかが目に入っても、ほがらかな気持ちになるというか、リラックスして過ごせるんです。さらにお茶を淹れて、ただぼーっとする時間があれば最高です。だからか一度も家を出ない日があったりします(笑)」

心の余白と整理収納には相関関係がある。能登屋さんも整理収納にハマっていくうちにその工程にすら楽しさを感じるようになってきたという。

「ちょっと熱中しすぎかもですが(笑)、片付けるたびに落ち着くというか、凛とした気持ちになっていくんですよね。モノを片付ける場所を決めておくだけで、子どもがどんどん部屋を散らかしても、『まあすぐ元に戻せるからいいか』とイライラしなくなってきて…。ああ、そう、『人にやさしくなれる』、これが最大の発見かもしれません」

整理と収納用品には無印良品のものも。
「無印の商品は削ぎ落とされたデザインがいいですよね。機能性もあるし、暮らしに溶け込むことを想定してデザインされているのが伝わってきます。ひとつのモノで何かを主張するようにつくられていないからこそ、どんなお家や空間にも合うのが面白い。同じモノを置いていてもそれぞれの家の使い方やインテリアによって違って見える、何色にも染まる"自由度"が高い気がします」


 

1.壁がけキッチンツールは色で分ける


 
能登屋英里
 
整理と収納 能登屋英里

ブラックのシリコーン系とステンレス系に分けて、真っ白なタイルにキッチンツールを壁がけするのが能登屋さん流。「ワンアクションで使えるのもポイントですが、色や素材、高さ順に分けて並べることでスッキリ感が出るようにしています。今でこそブラックの調理器具は増えましたが無印良品からブラックが発売されたときは衝撃が走りましたね。シリコーンシリーズは使いやすくてリピート買いしています」


上の写真、左から4本目から右へ
シリコーン ターナー
ナイロン  レードル
シリコーン調理  スプーン  
シリコーン調理  スプーン  スモール
シリコーンはけ

 

整理と収納 能登屋英里

能登屋さんのお気に入りの食器がずらりと並ぶ食器棚。「使用している食器棚は奥行きがあるので、蕎麦猪口などが取り出しやすいようにトレーに入れて引き出しスタイルで使っています。奥行きがありすぎると取り出しづらくなるので無印のポリプロピレン整理ボックスがぴったりなんです」


写真左から
ポリプロピレン整理ボックス3
ポリプロピレン整理ボックス4
 

整理と収納 能登屋英里

ステンレスとも相性抜群なブラック収納。「Found MUJIの箱展で出会ったポリプロピレン通函は、一目惚れして十箱、大人買いしました。こういった工具感のあるデザインが好きというのもあるんですがいい意味でいつもの無印らしさを感じさせないところも気に入っています」


ポリプロピレン通函/ダークグレー

 

2.狭い空間にはあえて大物家具でメリハリを

 
整理と収納 能登屋英里
 
整理と収納 能登屋英里

部屋が狭いと避けてしまいがちな大物家具を率先して取り入れている能登屋さん。「無印良品のスタッキングシェルフは大きいのが2つあって、小さいのがひとつ。本をたくさん入れてもほとんど歪まないし、ものすごく丈夫なんですよね。狭い空間に大物家具を置くことでメリハリが生まれてむしろ部屋を広く見せる視覚効果があるんです」


スタッキングシェルフセット・5段×2列・ウォールナット材

 

3.引き出し収納は小サイズを多めに配置

 
整理と収納 能登屋英里

玄関を入ってすぐ右隣にある縦長の扉付き収納には、無印良品の収納ボックスが美しく並びます。「私は“集中収納”と読んでいるんですけど書類や文房具など、どうしても生活感が出ちゃうものを扉付き収納の中にまとめて入れています。こういう場所を1カ所、持っておくと便利です」


写真上段
(左)再生ポリプロピレン入りファイルボックス・スタンダードタイプ
(右上)ポリプロピレン小物収納ボックス6段
(右下)ポリプロピレン小物収納ボックス3段
2段目
(左)ポリプロピレン  小物収納ケース   大  ホワイトグレー
(右)ポリプロピレン  小物収納ケース   小  ホワイトグレー
 3段目
ポリプロピレン  小物収納ケース  大  引出2個

 

整理と収納 能登屋英里
 
整理と収納 能登屋英里

洗面所収納はあとからつけたもの。日々、暮らしやすくするための工夫も重ねている。「無印良品でちょうどいいサイズの収納ボックスと出会って、ワンシーズン分のパジャマを洗面所に置けたら便利だなって。家族みんながわかりやすいようにラベリングもしています。キャスター付きだから掃除機もかけやすくて気に入っています」

( 写真上から)
ポリプロピレン  小物収納ケース  中  ホワイトグレー
ポリプロピレン  小物収納ケース  大  ホワイトグレー
ポリプロピレン収納ケース用キャスター

整理と収納 能登屋英里

クローゼットで使うケースは、幅34×奥行44.5cmの小サイズにこだわりが。「中に何を入れるかにもよりますが、小さめのサイズはボックス内が乱れなくて使いやすい。靴下などの小物の場合は奥行きや深さがあまりない方が出し入れしやすく場所を取らないときも。手前は白い板を挟んで中の服が見えないように、視覚的な情報量を減らしてちょっとでもフラットに見せられる工夫をしています」


( 写真上から)
ポリプロピレン収納ケース   小
ポリプロピレン収納ケース   中

 

4.スムーズな動線でぼんやり、ゆったり

 
整理と収納 能登屋英里

一日の中でお茶を飲みながらぼーっとする時間が一番好きだという能登屋さん。「起きたてで脳が半分寝ている状態でもお茶を淹れられたり、無意識に行動ができる。これはもう動線ができているから。部屋が整うと探しものや家事のタスクなど情報処理能力に使っていた時間が減って、結果好きなことに集中できたり、リラックスできる時間がつくれるんです」

耐熱ガラスメジャーカップ
 

整理と収納 能登屋英里

「狭くても、ちょっと模様替えをすることでリフレッシュできます。無印良品の壁に付けられる家具は模様替えアイテムとしても重宝してます。どこでも付けられるし、10cmほどの奥行きが絶妙。奥行きのある棚板だとちょっと大きすぎるかな、というときに使いやすい」


壁に付けられる家具棚

時間や心の余白は、整理収納と互いを補完しあうようなもの。すっきりと片付いた心地よい空間をつくっていくことで新しい人生や日常が始まっていくのかもしれません。


 





 

 
 
 
 

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