【イオンモール堺北花田】団地のはなし|私とこの本

キービジュアル画像:団地のはなし|私とこの本

イベント・地域情報/イベント

2019/10/04

 こんにちは、BOOKS1号です。

今週、読んでおすすめする本は『団地のはなし』です。

小説、詩、エッセイ、漫画、対談などから綴られる「団地」アンソロジー。

『 団地のはなし』

出版社: 青幻舎  著:山内マリコ、最果タヒ他

---------------

片山先生

先生、私はときどき「きれいな字だね」と褒められることがあるんですよ。先生に習字を習ったおかげです。泉北ニュータウンの団地の一室が先生の習字教室でしたね。

すっかり大人になった私のこと、先生は分からないかもしれません。私も先生の顔をはっきりと思い出せないのです。先生とお別れしたとき、私は小学4年生だったから。

でも、字を褒められると、先生のきちんと束ねられた髪や顔がぼんやりと浮かびます。

団地の前の、秋はたわわに実る銀杏、春は満開の桜。いまも変わりはありません。

---------------

 団地の一室の習字教室。部屋一面のたくさんの小さな机、書いた半紙を置く新聞紙、墨汁の香り。先生だけの特別な朱色。母の迎えを待つ夕暮れの桜の木の下。全部、私が大好きだったもの。

先生は、私が小学4年生のとき亡くなりました。「先生の病気が治ったら、また団地に行くことができる」と信じていたのに。私が味わった初めての哀傷。もう先生に褒めてもらえない……。

でも、他の人に字を褒めてもらえるたびに、先生を誇らしく思え、傷も癒えていきました。そう、先生は私の心の中で生きているのです。

 この本は、作家やクリエイター8人が綴る団地アンソロジー。団地には、窓の数だけそれぞれのストーリーがあります。豊かな緑、地域に根差したコミュニティ、そして私のように大切な思い出も。

ぜひお手にとって読んでみてください。団地の棟をイメージした装丁も素敵です。

「私とこの本」で紹介の本は、今日のずっといい言葉の黒板の下にあります。

 

→過去のアーカイヴはこちらから

MUJI BOOKSはこちらから

無印良品 イオンモール堺北花田